リニアモーターとは?

さて,運動タンパク質には大きく分けて2種類の運動様式があります.

それが,

リニアモーター

回転モーター

です.

リニアモーターとは,レールの上を滑走するごとく運動する形態です.

回転モーターは,回転子と固定子との相互作用により回転運動する形態です.

 

さて,ここではリニアモーターについて説明します.

リニアモーターには,

レールタンパク

がまず必要となります.

そして,レールタンパクの上を運動する,運動タンパクが必要となります.

これらの組み合わせによって,直線的な運動を行います.

生命現象での運動様式はほとんどがこのリニアモーターです.

さて,ではどのようなタンパク質があるのかを下の図にまとめてみました.

運動様式
レール分子

分子モーター

(運動の向き)

エネルギー源
生体機能

リニアモーター

アクチン
ミオシン(+端)ファミリー I
ATP

力発生,滑り運動,アメーバ運動,細胞内物質輸送

ミオシン(+端)ファミリー II

筋収縮,細胞分裂,原形質流動

微小管

ダイニン(-端)ファミリー

ATP

力発生,滑り運動,細胞内物質輸送,繊毛,鞭毛

微小管

キネシン(+,-端)ファミリー

キネシン(+端)

ncd(-端)

ATP

滑り運動,細胞内物質輸送

DNA

ポリメラーゼ

NTP

DNA複製

RNA

 

ポリメラーゼ

NTP

RNA複製

伸長因子(EF-G)

GTP

タンパク質合成

したの二つはとりあえず置いておいて,上の三つを見ると,

レールタンパク:アクチン,微小管

分子モーター:ミオシン,ダイニン,キネシン

のように分類できます.

これらはいずれもATPの加水分解反応による自由エネルギーを利用して運動しています.

その中でも,一番なじみ深いのが,筋収縮,でしょう.

我々の体の中の筋肉は,これらアクチン,ミオシン,という分子がメインとなって,相互作用を行い,結果として筋肉が収縮します.

その際,重い物を持ち上げたりして仕事を行えるわけです.

ミオシン,アクチンは筋肉以外にも,アメーバの運動や,細胞内における物質輸送,さらには細胞分裂などにも関与しています.

  

ミオシン分子(2MYS.pdb)

 

アクチン分子(1J6Z.pdb)

アクチンフィラメント(アクチンモノマーより推定)

次の,ダイニン,微小管は細胞内における輸送に重要な役割を果たしています.

さらに,繊毛運動,鞭毛運動(べん毛ではない,注意)などにも関与しています.

繊毛運動は,ゾウリムシなどの運動に欠かせません.

さらに,鞭毛運動は精子の運動などに関与しています.

 

キネシン,微小管は比較的研究の歴史が浅いタンパク質です.

主に,神経細胞内輸送,などに関与しているタンパク質です.

キネシン分子(3KIN.pdb)

 

さて,下の二つ,DNA?RNA?これも運動タンパク質?

確かに,これらは輸送,というよりも情報伝達ですね.

しかし,DNAはある意味での立派なレール,その上をRNAポリメラーゼがリニアな運動をしている.

RNAも立派なレール,その上をリボゾームがリニアな運動をしている.

ある意味,運動タンパクなのかもしれません.

実際に,RNAポリメラーゼとRNAとの相互作用を計測した報告もあります.

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